帰国から5日も経ってしまった。
バンコクを発つ前日には、ブリューパブを求めて降り立ったチャオプラヤ川の中州・クレット島で前ぶれなしの熱中症にやられ、上から下から大騒ぎ。涼しいところへ避難しようにもクーラーの効いた店などなく、タクシーもトゥクトゥクもいないローカルすぎるエリア。動けなくなり、かろうじて屋根のある、しかしひどく蒸し暑い広場のベンチにノビて止めどなく噴き出る汗にまみれつつ3時間、これ、もし汗が止まったら死ぬんじゃなかったっけと。ナントカ生き延びたわけだが。
日射病、熱射病、熱中症、呼び名はいろいろ変わってきたが、そのたぐいのヤツにもろに見舞われたのは去年に続きこれで2回目。前回は、冷房設備のない蒸し風呂体育館での卓球大会に徹夜明けで参加して発症。これは当たり前、というか仕事の帳尻を合わせるためとはいえ自殺行為。ただ、このときも身体が軋みフラフラのモーロー状態となったが、比べてみれば症状は軽かった(クーラーのある部屋に逃げ込めたし)。今回は、旅の終盤ゆえ疲れ気味ではあったが睡眠は足りていたし、水分もカロリーもそこそこ摂っていた。…トシかねえ。
K-5Ⅱs クアラルンプール、中華街近く。
ともあれ、10日間も竹をサボってしまった。5月だからまだいいが、これが1月2月なら音が戻るまでに1週間、手が馴染むまでに2週間。精進。
たかだか飲み食い道楽旅道中、気圧変化や乾燥で割れる可能性が高いという飛行機に竹を乗せる勇気はとても湧かないが、例えば、目下メキメキと精度を上げつつある3Dプリンターで我が愛管の内径と手孔をトレースしたプラ管があれば、宿で毎日数分の音出しくらいはできようし、なんなら街頭で小銭稼ぎさえできるかもしれない。外装をカーボンかなんかで今っぽく仕上げ、中継ぎを3個所に増やして可搬性と各パーツの相対的な剛性をアップさせれば、21世紀的トラベラーズ尺八の出来上がり。完璧なトレースができたとして、5万円なら買わない。2万5000円なら買う。
もちろん与太話のフリをして、3Dプリンター、もしくはさらに高度な立体造形技術によるコピー尺八が、いつか当たり前になるだろうアジキナキ将来を憂いているのである。