今年はとっとと肌寒くなってきているうえに、この数日は冷たい雨続き。つるべ落としの陽の短さと相まって、何年かぶりで若干引っ張られているような気がする。まあ仕事さえ滞らせなければ、多少ズーンとなっていても私の場合なんの支障もないのだけど。
竹は、吹き始めのヒンヤリという関門が復活してきたが、そこを越えれば秋らしく倍音バランスのいい音がしてα波を誘う。本番連チャン、頑張ろう。
さて、懐かしの成都で昨日まで行われていた世界卓球。男子は3位(ベスト4)だったが、女子の準優勝が霞むほどの戦績だったと言えるし、準優勝のドイツは “準決勝で中国に当たらなかった” だけのことであり、決勝では0-3でスコられたこと(さらに、3位韓国が準決勝でドイツと2-3の接戦であったこと)を思えば、日本男子は実質準優勝だ。その戦果は、少なくとも数字の上ではひとり張本智和の手柄に依る。中国からひとりで2点もぎ取った男子選手なんて、大会史を通じて彼の他にいるんだろうか(調べないが。女子では2010年、シンガポールが奇跡的に優勝したときのフォン・ティエンウェイがいる)。
オリンピック以降、中陣に下がる癖をつけたり、弱点と叩かれたフォアにこだわってバックをお留守にしたり、まるでそこらの十代選手が通るような迷い道に入っていたように見えた張本。今大会も予選リーグで東欧の無名選手にポロッと負けたりして(チームとしてはもちろん勝った)安定感は感じられなかったのだが、いざ王楚欽・樊振東と当たってみると、もうバックハンドは打点・スピード・回転とも明らかに(これまで世界一とされてきた)樊振東を圧していたし、下がったら勝ち目のなかったフォアの引き合いも、ひいき目なしで互角のところまできている。なんだ、ちゃんとオニのように成長してたんだ(失礼)。
まあとにもかくにもバックだ。あの
樊と戦って、バックのバチバチだけでも点が取れていく(コレのあり得なさ加減を知るのは卓球経験者のみである)のだから、フォアを無理に振る必要などどこにもない。のだが、振れば振ったでちゃんと勝負になる、というのがまた素晴らしい。仮想敵を中国に絞りすぎて各国の平幕相手に取りこぼすヘキがある、というのはご愛嬌として、張本が日本卓球史上最強のエースに育っているのは間違いのないところだろう。加えて、中国トップクラスを倒すための “日本選手に可能な” 作戦として「相手にフォアの決め球を打たせない」という張本のスタイルが正しいということも引き続き証明されることとなった。
もちろん、中国トップと同じストロングスタイルでさらに上を行くという方向も選択肢としてはあり得るが、中国とは競技人口やスポーツ風土・体制が異なる日本で卓球をやる限りそれは不可能に近い。中国から見れば、たとえば日本のトップクラスというのは、たまたま卓球が巧い人間がパーソナルな限界まで強くなった「だけ」のこと。途方もない数の人間の中からまず強く「なれそうな」人間を幾重にも選抜し、そのエリート中のエリートを国のシステムの中で徹底的に鍛え上げた中国のトップとは、ひとりのエリートの後ろに積み重なる落伍者の数が決定的に違う。そんな卓球モンスターたちを相手にするのだから、同じ土俵に上がった時点でほぼ負け。あちらの大砲を撃たせず、こちらのマシンガンの威力を高める方が効率的・現実的なのだ。
このお国柄の差は、張本が学業においても優等生であった=学業を取り上げられることがなかった、という生き方の自由にも表れているように思う。たとえば馬龍が実は勉強も大得意だったとして、はたして机に向かうことを許してもらえたか? 人生、スポーツばかりではツマラナイ。閑話休題。次はシングルスの7ゲームスマッチで、完調の(今回はどうやら軽く膝をヤってたフシがある)樊振東をやっつけてほしい。
ちなみに中国、対日本戦で馬龍を3番手の1点使いにした(そして及川を後半フルボッコにした)のは、三十路に入って体力的にキツい馬を休ませるためだったという観測もあるが、私は、馬龍を2点使い確実(つまり3番手には来ない)の張本に当ててしまったら高確率で負ける、という監督の読みがあったのではないかと考える。
女子は、中国との決勝では早田が故障で引っ込んでしまったので、そもそもわずかな勝ち目がほぼゼロになってしまったが、相変わらず良くも悪くも盤石の「中国に次ぐ位置」をキープ。しばらく見ない間に長崎美柚が急成長していて、準決勝までは「むう、イケるか」と思わせてくれたが、チャイナ相手ではまだまだだった。これは、戸上隼輔も同様。
張本や伊藤美誠に伍する高みまで上るためには、彼らと同等以上の本気度でもって「中国に勝つ」を念じつつもお題目にせず、ただ実現のための合理的な方策を死に物狂いで考えて粛々と実行する、熱く冷たく長い鍛錬が必要だろう。張本・伊藤は、それを中坊の頃から延々と続けて今がある。中国を除いた世界でいくら強くても、ハタチを超えて中国に勝てていないなら、それは絶望的なほど「あの二人からは」遅れているということだ。
K-5Ⅱs バンコクはどうやらイケイケになったが、成都は何年後かしら。
さて、なにをエラソウに。私は演奏会から今日までの約1月半でたった3回しか打てていない。こんなんじゃ横浜リーグでの昇格など遠いなァ。小忙しいオッサンの悲哀。
そう、オッサン。もう33歳、ムッキムキだった腕もちょっぴり細くなり、世代や戦術が完全に入れ替わって、それでもなお世界の第一線で戦える、今やはっきり旧世代の馬龍は、やはり卓球再開後の私が最も憧れる選手であり続けている(部活の頃は故・長谷川信彦さん)。オッサンは、カッコよく持ちこたえるオッサンが好きなのだ。よって、もちろん玉鷲も好きなのだ。
あっそうだ! 中国と云えば、メールでこんなんいただきました。音は電子の連なりに変換されて世界のあちこちで審査され、表彰状も電子で届くヨノナカとはなりにけり。
