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いずこじ

陰陽、笹の葉、風の色。琴古流尺八、道中甲有り呂有り。

ばっかり

戦争の最初の犠牲者は真実である(The first casualty of war is the truth)そうだ。原典は知らない。factでなくtruthであるのは気に喰わないが、言いたいことは容易に分かる。

SNSやスマホのカメラやドローンの “おかげ” をもって、我々はほとんど初めて高解像度の映像・画像で大暴力をその日のうちに、ヘタをすると生中継で見物するような仕儀となった。それらは「戦争はおそろしく忌むべきものだ」「人の命を奪ってはいけない」というメッセージを含んではいるが、ンなことはまともな人なら誰でもわきまえている当たり前であり、それよりも、ビジュアルのインパクトに乗じてさまざまな嘘や作為を忍ばせ、イノセンスを特定の方向へ導こうとする策動にこそ注意を払うべき…であった。もう何年も、何十年もの間。

結局、スパイ上がりのマッチョ大統領の(ひとつひとつは悲しくなるほど無意味でくだらない)プロパガンダ物量作戦が大いに奏功したからこそ彼奴は侵攻の開始に成功してしまったし、SNSの如き小手先の発信やコミュニケーションで世界があらまほしく繋がったかに錯覚した民草は、時代遅れなジャイアン的ナショナリストの増長を警戒しなかった。また玉石混淆、というかほぼ石しかない脳天気ショートフィルムで暇を潰しているうちに、自国が急速に民度を下げて「戦争? やるってんなら理のあることなんでしょ」としか思わない思考停止者が大方を占める国になり果てるまでそれを見過ごしてきた(ワガクニがそうでないとでも?)。

退屈させないようさまざま楽しませてアホを育て、アホのもたらした所為を衝撃映像におさめてはまたアホの感情を大きく揺さぶるスパイラル。懐かしの「男組」ではないが、なんだか動物扱いのようではないか。インターネットは軍事技術として始まった。それが民生に降りてきて、ネットやITを駆使した戦争で民を踊らせる。また悲しからずや。テレビばかり見ているとバカになる。テレビに限らず、ばっかり食べはアホを生む。アホは御しやすい。さて。


LX100

関西グルメ界の泰斗と久しぶりの取材旅。この方は年間の外食回数が約1000回に及び、ばっかり食べではなく「食べてばっかり」を前人未踏のレベルで極めるお人なのだが、他方で旺盛な読書家であり、もう何年ぶりかで取材に同道した今回も「なんか面白い本、読んだ?」といつもの質問を投げられてグッと詰まる我…。とめどなく進行していく老眼に甘え、書を捨てて竹「ばっかり」吹いていてもこれは当然イカン。それにしても、肉を食べに食べた遠征初日の取材を終えて、さあ晩ごはん。カメラマンさんとみったり「もう肉はええわな」と街をぶらついていると、その日知ったばかりの興味深い銘柄牛を専門に扱う焼肉店を偶然(いや、きっとある種の必然)見つけ、小躍りせんばかりの勢いで飛び込んでいく、数えで云えば古希の御大、その「知りたい・食べたい」のエネルギーの大きさに改めて舌を巻いたのだった。私などは、食べもののこと「も」書きますという何でも屋ライターに過ぎない。本気の、そして能動的な「ばっかり」には凄みがある。これもまた本当のことだ。そのばっかりが社会においてどれだけの力を帯びるかは時の運だとしても。
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プロフィール

HN:
河宮拓郎(カワミヤタクオ)
性別:
非公開

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