ともかくも、発信メディアとしてのネットだ。エログロと直截的な差別にふれなければ何でもあり。スマホかパソコンがあれば、言いたいこと、やりたいことをアップロードでき、80億人に見て・聞いて・読んでもらえる可能性を獲得できるのだから、まあ従来のメディアとは発信力のケタが違いすぎる。いまや YouTube には、1分間につき500時間を超える動画がアップされているそうな。
となれば当然のことながら、スモーキーマウンテンのごとき情報の堆積に埋もれることなくヒトサマに発信を届けるためには(どこかでい聞いたコトノハだが)「インパクト」が決め手となる。しかしてその行き着くところは、どんな手を使おうが目を、耳を惹いた者の勝ち。
あのナントカも味噌も一緒くたの選挙もそう。識者がバカにしている間に、おのれをヒロイックに見せる臆面もない動画を乱造してSNSで名前を売り、リテラシー弱者を動かした者が勝つ、そういう世界になっていくのだろう。いや、考えてみれば今までも似たようなものか。フワフワ雷同タイプの引っかけ方が時代に合わせて変わっただけとも云える。
てなことを思いつつ、私もまた発信をする。遠く九十九里は師匠の庵で撮影をさせていただいたにもかかわらず呑みすぎ・寝不足で調子イマイチの一二三だが、師の趣味や審美眼が滲む背景の賑やかさに免じてヒトツ。
今回は、以前に「みみより会」において尺八と三絃・箏のサロンコンサートを企画してくださった、師のバイク仲間である故・並木鷹男さんを「送る会」にて、一二三鉢返調を献笛するための千葉行きだった。お客に背を向け、祭壇に向かって吹くのは久しぶりだったが、後ろがどんな表情で曲を聴いてくれているのか確かめようがないのはやはり不安なものだなと。でも、そこは並木さんゆかりのみなさま、かのサロンコンサートの折と同様、馴染みのなかろう本曲を最後まで身じろぎもせず聴いてくださった。有難し。
聴いてもらう、といえば、おとといは「邦楽のひととき」で私の “最後の” オーディション合格曲・雲井獅子が放送されたのだった。ご高聴をいただいたみなさま、ありがとうございました。1年以上前のこととて収録本番のディテールなどまったく覚えておらず、さて今より1歳若い私はどんな演奏をしただろうかと聴いてみて…。
ひとさまに聴かせるために放った過去の音。良し悪しは云うまい。これが1年前の到達点。以後の400日で少しは前へ歩いた手応え(足応え?)を得、これから何をどうしたらより良くなるかを思い知っただけで大収穫、と。それにしても、私を挟んで前門に賢順賞、後門にくまもと最優秀賞の放送順。オセロ方式で私も何かの賞をいただけてしまいそうだ。呵々。
ご都合で聴けなかったみなさまにおかれましては、
こちらにて是非。7月29日(月)午前11:25配信終了だそうです。以後はモアトルクを蓄え、自分の足であの東洋一のスタジオを目指します。
S5Ⅱ 並木さんの愛車、おそらく世界一のミントコンディションを誇る1960年式ヤマハYDS1。