忍者ブログ

いずこじ

陰陽、笹の葉、風の色。琴古流尺八、道中甲有り呂有り。

12/25「阿部幸夫七十五歳誕生日コンサート」のお知らせ<再>

「下鴨音楽祭」が終わって数日。面白い舞台だった。仕事が忙しくなければ、あちこちの会場を回っていろんなライブを見てみたかったが。

やはり、と言うべきなのか、邦楽を知らない人がほとんどを占める聴衆(といっても、今回は20人弱・笑)を前に吹くとなると、なんとのう「分かりやすく」を心がけてしまう。なにが分かりやすさなのかに確信はないが、写真で云えば、コントラストや彩度を高めるような志向…。これは正解だろうか、不正解だろうか。分からないままあと数日で、ひとまえでの今年最後の演奏機会がやってくる。


K-01 この色味も K-5 や K-5Ⅱとだいぶ違う。

阿部幸夫七十五歳誕生日コンサート ~鎮魂の曲を集めて~
12月25日(日)17:55開演(開場17:35/20:15終演予定)
入場無料
出演:阿部幸夫/阿部大介/阿部勇介
助演:平野裕子/浅井晴風/黒川眞/松浦元義/河宮拓郎
曲目:鹿の遠音 楫枕/虫の音/残月/こんくゎい/布袋軒所伝 鈴慕/交声曲 蕗 夕べの雲/望郷 落人にあは雪の舞い

あえて先にご案内したのと同内容を掲載しますが、ここへ福永千恵子先生が加わり、曲も増えます。ので、終演時間は遅くなるでしょう。ちゃんと書かないのは、私も確定プログラムをまだ知らないからです。音がやみ、過去になるその瞬間まで変容を続ける演奏会。明鏡止水と嵐のようなブラウン運動が並立する阿部先生のウェイ・オブ・ライフを表すいち状況ではあるのでしょう。

そろそろ告白しますと、この会において私が繰り返し怖い怖いとおののいているのは、プログラム中の「交声曲 蕗 夕べの雲」打ち合わせ、その蕗を「竹で吹く」ことです。

箏組歌の蕗にはむろん竹の譜などないのですが、阿部先生が新たに譜を書き起こしてくださいました。これが!これが!もう八重衣も三津山もはだしで逃げ出す難しさ。ちっとは練習もしていますが、完璧などは来世の話、及第点すらはるか遠く。イヤハヤ、なんちゅう曲を受け持たせていただい(てしまっ)たことか。しかし、私の本番の出来はともかく、蕗の竹がどんな風に難しいか、こそは、箏曲を含む三曲合奏に阿部先生がどのような可能性を見ているか、その一端を示すものではあります。

そして、この打ち合わせのキモは、竹が蕗を吹くことなどではもちろんなく、「交声曲」と銘打つとおり、「蕗と夕べの雲の両方を糸が歌う」ことです。どうでしょう。そんな演奏、聴いたことがありますか? ほとんど全ての人がないでしょうし、この先もそんな演奏を聴く機会はまずめったにないでしょう。僭越ながら、いつなんどきでも、家族のどなたとでも合奏できる、阿部家ならではの到達点と言えるかもしれません。地歌箏曲における交声、私は初めて聴いたときに総毛立ちましたが、みなさまは、さて。

「古典、伝統は創造無きところに存在し得ない」。我が師の言葉がこだまします。蕗と打ち合わせることができる曲として、光崎検校は夕べの雲を著した。その打ち合わせは今も行われているが、「歌い合わせ」は廃れてしまった、もしくはもともと一般的ではない。それを「じゃあやってみましょう」と舞台にかけるのは、まさしく古典・伝統のための創造と呼ぶべき営為でありましょう。

自分が足を引っ張る可能性が高い、今のところ誰も知らない “蓋然的名演” を宣伝する。私はいったい阿呆なのか、馬鹿なのか。確かめてやろうと思われた方は是非、イエスと阿部先生の誕生日、板橋区立グリーンホールへお運びください。
PR

コメント

プロフィール

HN:
河宮拓郎(カワミヤタクオ)
性別:
非公開

P R