忍者ブログ

いずこじ

陰陽、笹の葉、風の色。琴古流尺八、道中甲有り呂有り。

上げるべし

というわけで、年も改まったので、晩夏の演奏会などはもう過去のこと。誰も覚えていないだろうと、初めてオノレの動画をネットの彼岸に上げてみた。事情によっては時間の制限などあると聞いていたのだがそれもなく、意外と簡単だったな…。

演奏会での生演奏と、音源リリースを目的とした演奏とは大きく違う。それくらいは素人の私にも分かる。あくまでこの日この時会場へ来てくれたお客さんのために行ったこれらの演奏は、繰り返し聴いてもらうためのものではない。ないのだが、わざわざネットのための収録を別立てで行う潤沢な資金やスケジュールを持たない私としては、この日の収穫を「まあ音源のようなものとして聴いてみてください」と差し出すしかない。

それにしても改めて、緞帳のない舞台での調弦というのは難しい(ように思える)。私としては、奏者全員が揃って前を向くまでは5分だろうが10分だろうが、いくら時間を使っても構わないから気持ちのいい調弦をとってもらえさえすればいいのだが、糸方としてはどうもそうはいかない事情があるのかもしれない。このあたり、次回緞帳レスの会場を使うときにはよくよくコンセンサスを醸成しておかねばなるまい。そも緞帳があったとて「今日は実に気持ちいい調弦だったなあ」という演奏機会は滅多とないのだ。


撮影/岡森大輔 私は私で袴のセンターがズレていた。恥ずい。

パンフ転載ついでに、挨拶文も。

ご挨拶

みなさま、本日は残暑厳しき中、「河宮拓郎 尺八演奏会」にお運びくださいまして、まことに有り難うございます。
19歳で琴古流尺八に触れ、30年以上が経ちました。指を折れば、大学入学から東京で16年を過ごし、2006年に京都に移り住んで今年が16年目。東と西とで同じだけの時間を吹いてきたことになります。
竹道に入りて以来の師・久我敦彦先生を措けば、東京時代に最も多くのことを教えてくださったのは、本日、じつに全5曲中4曲で助演をいただく阿部幸夫先生です。このたびも、「コンクールで賞をいただいておきながら、何もしないつもり?」という喝に始まり、この演奏会のために肝を煎りに煎ってくださいました。
一方、京都に住まって以降の私は「ほぼひとりで吹いているだけ」という時期が長く続いたのですが、あるとき、私と同じく東京から京都に移られた斯道の大先輩、杉沼左千雄さんが佳ききっかけを作ってくださったことから、この5年ほどでわずかに顔が広がったように思います。井上溪子先生、島田洋子先生、佐野満穂先生のお三方は、その流れの中でご交誼をいただくようになった練達のみなさまです。
昨年末、とあるご縁からこの東西四師(と私)が笹の露を酌み交わす賑やかな夜があり、その後ほどなく、本日の会の概要が定まりました。すなわち、私に愉しくも学び多き音楽の時間を与えてくださる先達とのえにし、それをひとつ処に集めて花と咲かせようという、これは演奏会であります。
思えば10年前のおととい、私は東京・本郷で生まれて初めて単独の演奏会を持ちました。牛歩とはいえ、以来10年分の道程は本日の演奏に滲ませたいと。ご高聴をいただき、さらにご指導ご鞭撻を賜れば恐悦至極に存じます。まずまずの長丁場ではありますが、どうかごゆるりとお寛ぎのうえ、私の大切な宝物であるえにしの花をご覧くださいませ。

河宮拓郎
PR

コメント

プロフィール

HN:
河宮拓郎(カワミヤタクオ)
性別:
非公開

P R