パツパツ仕事、バッチ来いとパソコンの前に張りついて2週間余。さすがに竹の音がだんだんとしおれてきた。原因は分かりきっている。電磁波でもブルーライトでもなく、身体を動かしていないから、というか、卓球をしていないからだ。これではイカンと、無理くりに時間を空けて卓球場へ。ひと試合するだけで噴き出す汗。全力でラケットをブン回し、クロスにしか打てない強ドライブを叩き込む。ああ気持ちがいい。竹だろうが卓球だろうが、私は気持ちがよくないと続けられないニンゲンなのだなあ。半月空いた間に運動は一切していなかったが思ったほど勘は鈍っておらず、手合わせした皆さんをありがたく総ナメにして帰ってくると、ほら、竹も鳴りを取り戻している。
定期的にスポーツをする、という日常が竹に及ぼす影響は、私の場合とても大きいと思っている。もし卓球をしていなければ、今のメイン八寸に馴染むまでに(というより、どこまでの音を出せるのかを知るだけで)相当な時間がかかったことだろう。高校卒業後は四十過ぎまでスポーツの一切から遠ざかっていたし、ハタチ前後からはずっとタバコを吸っている。つきあい方が分かってくるまでの2年ほどはデタラメに息が要ったメイン八寸、これに出合ったのが卓球再開後であったことは、またしてもの良き時分どきであったと言える。下手なタイミングで手にしていたら、ついに鳴らしきること能わずこの楽器を諦めていたかもしれない。
スポーツをする前後で何が変わるか。個人的な感覚で言うなら、手指・腕の筋肉から肺・腹筋など胴体の中まで、身体のあらゆるパーツが脳からの命令で即動くアクティブ状態を自然に保てるようになる、というところだろうか。それと、やはり肩で息をすることになるので肺が開き、息を本来のスペックで大きく使えるようになる。どれも当たり前というか、身体を動かせばそりゃそうなるよ、というだけの話。結果、指が滑らかに回るようになり、息のコントロールとキレが向上する。もちろん相対的に、だが。
誰でもそうだろう、竹を吹いているとよく「肺活量が要るんでしょうね」と訊かれるが、私の肺活量は平均値よりわずかに上くらいで大したことはない。腹式呼吸に入り用なはずの腹筋の性能に至っては、世のオッサンの平均を下回っている確信がある(だからしばしば腰を痛める)。しかし、吹いているときに肺や腹筋の状態を常時チェックし、かつ微分的に制御するという「操作」は、竹吹きなのだからもちろん行っていて、ゆえに素人さんからすれば一息が長く保っているように見える。その操作が、したたるほどの汗をかいたあとは確実にやりやすくなる。
よって、本番のある日は早起きして、卓球は無理としても軽くジョギングくらいしておくべきなのだ(当然、走ったあとのシャワーも身体をほぐすのに役立つ)。が、かつてそれを実行できたことが一度もない。着物を用意して、暗譜の穴を潰してと、前夜からいつもバタバタ。結局舞台に立つとき、身体はコリ固まっている。そのあたりも含め、竹の実力ということだろう。
GM1
大阪マスターズ2年連続3回戦負け、近畿選手権2年連続1回戦負け。卓球の方は竹どころの騒ぎではないミジンコ並みの実力だが、専門のコーチに教わったことが一度もなく、20年以上のブランクを経て再開した中年としては「まあ頑張ってる」くらいのグループに入れてもらえるのではないかと思うのだ。