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いずこじ

陰陽、笹の葉、風の色。琴古流尺八、道中甲有り呂有り。

メリ補足

去る日曜の八竹会(また告知忘れ…)におけるマックスくんとのハモり夕焼け小焼けは、追い込みのひとり稽古を頑張ってくれたのだろう、イントロでの私のずっこけを除けばまずまずの首尾にて。短期間では身につけづらく、完璧はとても望めないとはいえ、やっぱりアタリ付きで吹かないと、私が教えた意味は薄くなるというもの。曲は平易に、手はキッチリ、の方向で押したのは正解だった。

御山獅子は、下合わせよりわずかに緩めのテンポであったがゆえに濃度が高まり、なんとのうみっちりした演奏になったように思う。七小町や宇治巡り、笹の露あたりと張る、三曲映えする “まあまあ長い曲” のひとつ。学生の頃からそれなりに練習はしていたものの、舞台にかけるのは初めてだったが、うむ、派手であってもド派手にはならないのが菊岡検校らしくてヨイ。


K-1 Ⅱ

さてメリ。前項でくどくど述べたメソッドはあくまで私の習ったメリであり、“それ以外” のメリ方にはあえて触れなかった。が、我が師匠がこれに反応してくださったので、コメントを引用してハウツーメリの佳き補足としよう。

●メリ。
歌口に当てる息の方向を管内側に変化させる。
 
その方法は、
①息の方向は一定のまま、
顔全体を後方へ引くことで歌口が手前に傾き、息が管内側に向く。
 
②息の方向を唇(下顎)の前後で変化させる。
求める音程に必要な指孔の開閉と合わせて。
 
大きくこの二つに思います。
 
①派は、川瀬、青木、横山、かな。
唇固定派の人⁉️
 
②派は、山口、宮田、福田、藤原、かな。
唇脱力派の人⁉️
 
メリの技法は複合的なものなので、断定はできませんが。
 
①派の方法論の核心は、
陰陽の陰の音色を表出すること。音程に加えて《音色の変化を重視する。》
顔(頭全体)の前後運動、陰陽往復の刹那、丹田に気息をためて陰、陽それぞれに向かう気魂を音に体現する。
 
②派は、《音色の変化より音程重視》か。音色の変化は求めない。
同色異音程。
唇フリー派かつ洋楽的?技巧派かな。

ワタシノオモウトコロ。

以上、太字化は引用者による。もとは私信の類であれば、敬称略、ご容赦を。

しかしまあ、メリについての教科書であるところの琴古流初學入門手引・琴古流尺八樂典綱要とも書かれてあることは共通で「メリカリノ作用ハメリハ俯シカリハ仰ク、但シ俯シトハ腮ヲ引クノ意ニシテ仰クトハ腮ヲ出スノ意ナリトス」とのみ。この記述はまったく正しいが煎じ詰めすぎで、これだけを読んで分かるわけはない。私や師匠の解説はこれよりだいぶ丁寧だけど、それでも読んでそのまま実行できる初心者などほぼいないだろう。

というわけで、先達はあらまほしけれ。これから尺八を始めようという奇特な向きは、割き得る最大限の労力を師匠選びに充てるべきだ。どう選ぶか。もちろん、生の演奏を聴いて。CD や YouTube ではダメ。上手下手など分からなくてもいいが、音色・旋律・姿勢・立ち振る舞いなどに心震わせるところがあると思えたら、マッチング失敗の確率はだいぶ下がる。なんなら半年や1年くらいかけてあちこちの演奏会(できれば有料の)を聴いてまわるといい。今すぐ習いたいのにそんなに待てない? なら手近な先生にひょいと習えばいい。あとになって思惑違い棚であったと気づいても、入門時と同様にひょいと辞めてよそへ行くのはソコソコ難しいが。

関東近県の実家に戻った斯道の友人の話。都心の社中に通うには遠すぎるので、師についての稽古は諦めかけていたところ、とある高名な先生が家から遠からずの場所に出稽古に来ていると知り、もっけの幸いと稽古の見学を申し込んだ、が、直々に断られた。見学=品定めとは失礼な、という理屈であったそうだ。入門前の見学は教えられる側・教える側の双方にメリットをしかもたらさないように思えるのに、先生はそれを本当に失礼なことだと見なしているのか。おそらくは否。相手が素人だろうと玄人だろうと、評価されるのが怖いなら表現などするものではない。まして教えるなど。
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河宮拓郎(カワミヤタクオ)
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