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いずこじ

陰陽、笹の葉、風の色。琴古流尺八、道中甲有り呂有り。

かんぜんと

かの完全試合は、プロ野球にほぼ全く興味のない私にも衝撃をもたらすほど凄いものだった。あの試合が仮に、仮に彼の生涯ベストピッチングだったとして、同じくそのキャリアにおいて一度でもあれと同等のピッチングをできる、という投手がはたして世界に何人いるだろう。そして、彼はまだハタチだ。夢と希望のほかに何がある。

その佐々木朗希投手は少年時代から、ストレートを投げるときに人差し指・中指の2本をピッタリつけてボールを握っているのだという。曰く「力が逃げない」。2本の指でボールを挟む方向への力が不要になり、かつ、ボールのリリースポイントを回転軸から最も遠ざけることができる=腕が同じスピードで振られるなら最大の遠心力を得られる。物理で考えればたしかに尤もなことだ。されど、リリース直前にボールを支持しているポイントは2点から1点に近づくわけで、素人考えでもコントロールを安定させることは難しくなる。おそらく「指を開いた方がいいぞ」というアドバイスを受けたことも一再ならぬことだったろうが、それでも力を逃がすのはイヤだ、と我を通す。とてもいい。

身体を動かせば息が逃げる・音が揺らぐ、胸と唇で吹けばメリカリで破綻する。アタリが縮こまれば歯切れが悪くなり、開け指が下がれば音も下がる。水は低きに流れて逃げる。物理的に低きへ流れたアクションは、竹を知らない人が聴き咎めなかったとしても必ずネガにはたらいて音を濁らせる。正しい演奏に必要なすべてのフィジカル条件を最良の状態に調えたまま終曲に辿り着くことは簡単ではなく、「たったいまも絶対に何かを間違えている」と決めつけてセルフチェックを行うくらいでちょうどいい。音楽の前に、まずは物理の時間だ。いずこの世界でも、パーフェクトは難しい。


LX100 くそっ、1枚だけ撮ってしまった。

暑い! 竹の音が日々全く安定せず困ったものだが、お天道さまにはかなわない。
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プロフィール

HN:
河宮拓郎(カワミヤタクオ)
性別:
非公開

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