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いずこじ

陰陽、笹の葉、風の色。琴古流尺八、道中甲有り呂有り。

Ola!

こちらでの移動の足は、お大尽でない限り三輪のオートリクシャーとなる。100%ふっかけてくるのを半値~三分の一にまで値切り倒さなければならない、名にし負う運賃交渉のメンドクサさにはさしものインド人もうんざりであるらしく、この数年でUBERに似た配車アプリ「OlaCabs」が急速に普及したそうだ。こいつが答え一発(古い)で距離に応じた適正料金、つまり運ちゃんの第一声の半値~三分の一の運賃をはじき出し、配車されたリクシャーはその金額を守らなければならないので交渉は基本不要になる。

劇的な効率化であるが、我が導師・小此木さんは「あの交渉が完全になくなってしまうのは寂しいし、ドライバーがかわいそうでもある」と、自身もOlaをフル活用しながら嘆く。古くさくて理解が必要でメンドクサイものへの、エトランゼとしての感慨。分からないでもない。古典邦楽などなくなってしまえ、と思う人は少ないだろうが、演奏会へ足を運ぶ邦楽非経験者もまた少ない。Olaで近くにクルマが見つからないので流しを停め、「Ola says…」で交渉を始めると、「Ola, Ola, Ola!」、また Ola かよと落胆の運ちゃん。たしかにちょっとかわいそうではあるし、やれやれヒデエ時代だ、の表情にオノレの思うところが少しくオーバーラップする。

別の地方へ料理修業に発った導師と別れ、本日より初めてインドひとりぼっち。インディアン・イングリッシュがいまだにほとんど聞き取れずろくに会話が成立しない私であれば、Olaなくば延々と交渉に負け続け、ぼったくり料金をむしられていただろう。が、本来はそれが郷に入るためのイニシエーションであったはず。ネットに甘やかされて、インターナショナルもやしっ子、いやさ、もやしオヤジが育っていく。


K-5Ⅱs(以下同) リクシャーに限らずあらゆる二輪・三輪がこの衝突寸前の間合いで右に左に割り込み合いながら40~50km/h出す。前後の車間は最短20cm(むろん走行中の話だ)。大通りの逆走も当たり前。こっちはシートベルトもできないんだ、ヤメテクレー。写真も、言うまでもなく走行中に撮ったもの。このあと、左のリクシャーはこちらの鼻先を文字通りかすめて前に割り込んでくる。

インド人・Mさん宅での御前演奏は、いろいろ考えて鹿の遠音を。こちらの予想をはるかに、はるかに、はるかに越えて喜んでもらえた。日本人の奥さんとの間に生まれた小学校低学年くらいの娘ちゃんも大喜びで、私の似顔絵まで描いてくれた。旅程の途中から私がぼっちになると知るや、案内しマス!とMさん。ひとまず、明日はマハーバリプラム(チェンナイから50km以上の遺跡の街)の日の出を見に行きまショウ、ということで朝5時にホテルまで迎えに来てくれるらしい。どんだけ気に入ってもらえたんだ。これはお返しにもうひと吹きやふた吹きはしなければ。

 
ヒンドゥー・タミル・日・英、クァドリリンガルの娘ちゃん。えーと、似てる、のか?

導師が言っていた。「音楽家は特別な存在なんですよ」。詳しいことはよく分からないが、例外的にカーストの相当な上位に属すると見なされ、そしてMさんは、音楽はやらないが(※ギターやバイオリンなどいろんな楽器を学んだ趣味人と後に知る。娘ちゃんにも伝統声楽や舞踊を学ばせているそう)もともとこの格のカーストに属する生まれであるそうだ。なるほど、なるほど、カーストね。因習は今も。それは措くとして、さまでのゲタを履かせてもらえる「音楽家」とは、いったいどこからが範疇なんだろう?

ちなみに、よそは知らぬが今のチェンナイは昼間で体感30℃ちょい、夜ははっきり涼しい。湿度も50%以下だろう。クルマにはねられぬよう、外で水浸しのトイレに行かずに済むよう注意を怠らなければまずは快適。手食べにも少しは慣れたが、猫舌に加えひどい猫手でもある私は、できたてのグレービーをニャーニャー鳴きながらすくっている。
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HN:
河宮拓郎(カワミヤタクオ)
性別:
非公開

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