琴古流本曲 鹿の遠音
尺八:河宮拓郎
○○本曲とは、特定の楽器(例えば尺八や胡弓)のために作曲された曲を指します。琴古流といえば尺八をしか指しませんので、琴古流尺八本曲という必要はなく、琴古流本曲、で尺八本曲であることは知れるわけです。
琴古流本曲においては「外典」、つまり番外に位置づけられる「鹿の遠音」は、深山に鳴く鹿を描写する叙景の曲で、あたかも二頭の鹿が鳴き交わすように、二管による吹き合わせが広く行われています。が、この数年、いくつかのコンクールにこの曲で参加するため単管で(かつ抜粋で)吹くことを繰り返すうち、独奏にもそれなりの情趣がある、と思うようになりました。あまり具体的なことを書いて感興の幅を狭めてはいけませんのでよしますが、二人吹きが一般的な曲をなぜひとりで吹くのか、さまざま想像していただくのも一興かと。
また、「鹿の遠音」は琴古流のみならず、全本曲中にあっても屈指の知名度を誇る“メジャー曲”。検索すればさまざまな動画が出てきますので、ふだん尺八や邦楽に馴染みのないみなさまにおかれましては、ぜひ本日の演奏とお聴き比べくださいませ。
(以上、パンフレットより)
撮影/岡森大輔