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いずこじ

陰陽、笹の葉、風の色。琴古流尺八、道中甲有り呂有り。

ボーッと吹いてんじゃ…

吹いている最中に、しばしば無関係なことを考えるようになったのはいつ頃からだろうか、今となっては判然としないが、おそらく学生の頃からやっているはずだ。以前の舞台で苦心した記憶がよみがえる、くらいならまだしもだが、子供時分の益体もない場面/今週末までに買わなければならないもの/これから取りかかる原稿の書き出しをどうするか…などなど。ひどいと、今吹いているこの旋律に似ている曲があるよなあ、あの曲だっけ、この曲だっけと頭の中で歌いながら検証を始めてしまったり。

ひとり稽古のときだけでなく、糸方と合わせていても、おつむが煙のようにフワフワとあらぬほうへ流れていくことがある。手は勝手に動いていて、拍をとり逃すわけでも、ディテールをサボるわけでもない。だが、別のことを考えている以上、それは過去の演奏の蓄積をなぞっているだけであり、およそクリエイティブではない。

こんな不埒が起きるのはもちろん暗譜している曲を吹く時に限られるのだが、にしても、別のことを考えながら曲を吹くことがよくできるものだと我ながら思う。譜を見ないと話にならない曲では、もちろんそれなりに集中して余計なことを考えないようにしているのだが、最もデンジャラスなのは「半分がた覚えている曲」だ。トイレのタオルをそろそろ替えないとなあ、キャベツが残ってるからお好み焼きでやっつけちまおう、ハッ、次に吹くべき手が分からない、ちゃんと譜を見ないと、そう思った時には目のピントがバッチリ譜から離れていて、もう戻れない。

と、こういう経験を普段からしている人はきっとかなりの数いるはずなのだが、それをわざわざ話題にすることもないためか、「あー、それ私も!」という邦楽人に会ったことはないし、本番を聴いていた誰かから「考え事してたでしょ」と指摘されたこともない。まあ、気づいたとしても口に出してそんな指摘をする親切な人はそういないか。

GW以降、三つの舞台が飛び去っていったが、それでも宿題の曲は山盛り。吹きながら物思いに耽るなど遠いありさまであるから、まずは、結局、精進。


K-1 II

そして、デタラメに早い梅雨入り。心の準備ができていないところへ、いちばん身体にこたえる季節がやってきてしまった。早くも目が腫れて肩はバキバキ、心ユーウツだが、湿気にとり殺されるわけにはいかない。無論、生物と無生物のあいだのアレにも。
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河宮拓郎(カワミヤタクオ)
性別:
非公開

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